吉田東雄「?」
ふふふ、面白いことを言うね。
「ありがとう、吉田社長お兄さん」灰原優歌の声は、さっきまで外で彼に向かって反抗的だった人とは思えないほど従順だった。
吉田東雄「……」
この二人とも、ろくな人間じゃない。
「お兄さん、おやすみなさい」
灰原優歌は突然久保時渡に目を細め、アラスを連れて階段を上がった。
灰原優歌が去った後。
吉田東雄がまだ状況を把握できていないうちに、隣の男が彼を横目で見た。
「まだ帰らないのか?」
吉田東雄「???」
聞いてよ、これが人の言うことか??
真夜中に呼び出しておいて、本当に灰原優歌を家に連れて行くだけだったのか!!?
……
翌日。
吉田麻奈未は早朝から電話をかけてきて様子を尋ねた。
「優歌、大丈夫?」吉田麻奈未は少し緊張した様子だった。
昨夜は、彼女は一睡もできなかった。
渡様に対して、自分は少し臆病すぎたと感じたが、確かに立ち向かう勇気はなかった。
「あなたのおかげで、まだ生きてるわ」灰原優歌はゆっくりと答えた。
「……」
吉田麻奈未は説明した:「うぅ、ごめんね優歌、私、渡様が怖すぎて」
「今度からバーには誘わないで」
灰原優歌はそれほど気にしている様子もなく、適当に二言三言なだけて電話を切った。
月曜日。
永徳高校。
学校中に噂が広まっていた。柴田裕香が一ヶ月の休暇を取り、ピアノコンサートツアーに参加するという。
「まじかよ、まだツアーする気分なんだ??すごすぎだろ」
「余計な心配すんな。あの子には内田家がついてるんだぞ。三年の保護者会の時、内田夫人が柴田裕香を可愛がってたの見ただろ」
「でも、それって柴田家のお嬢様だったからじゃない??今は柴田家から追い出されたのに……」
「そんなわけないでしょ?灰原優歌は名目上の地位を得ただけよ。才能や教養で言えば、柴田裕香には誇れるものがいっぱいあるわ!
聞いた話だけど、柴田裕香の腕時計また新しくなったらしいよ。五百万円以上するんだって。追い出されたんなら、そんな贅沢できるわけないでしょ?」
「そうだね。柴田家も何考えてるんだか、急にこんなことして。私なら柴田裕香を残すわ。だって、柴田裕香は本当に優秀で、家族の面目を保てるもの」
……