第271章 お兄さんと一緒に祖父を見舞う

「いりません」

灰原優歌は目尻を動かし、先ほど柴田陸信から送られてきたメッセージを思い出した。

やはり彼女のために買ったものだったのだ。

「気に入らないのかな？」

柴田陸信は目を暗くし、「それとも、お兄さんからのプレゼントが、優歌は好きじゃないのかな？」

「プレゼントが高価すぎます」

灰原優歌の瞳は澄んでいたが、その口調には淡い距離感があった。

柴田陸信はプレゼントを持つ手で、ギフトボックスを軽く撫で、優雅な笑みを浮かべながら「優歌は、お兄さんのことが嫌いなの？」

灰原優歌には理解できなかった。なぜ柴田家の人々は、突然態度を変えて、彼女にこんなに優しくなったのか。

灰原優歌が長い間黙っているのを見て、柴田陸信は突然口角を上げ、低く温かい声で笑いながら「じゃあ、嫌いじゃないということだね」

灰原優歌：「？」

「じゃあ、お兄さんと一緒におじい様に会いに行かない？」

柴田陸信のこの言葉は、意図的か無意図的か、ちょうど灰原優歌の気になるポイントを突いていた。

「はい」

灰原優歌はまだおじい様に会いに行っていなかったことを思い出し、頷いた。

それを見て、柴田陸信の口角が、かすかに上がり、何気なく灰原優歌を見る目には、優しさが満ちていた。

……

病院。

柴田おじい様は手術を終え、体調は徐々に回復していた。

しかし、この数日間、柴田の母が泣きながら、柴田陸信が柴田裕香を柴田家から追い出したという話を聞いていた。

柴田おじい様はまぶたを震わせ、「陸信よ、本当に裕香を追い出したのか？」

柴田陸信はゆっくりとリンゴの皮を剥きながら、「彼女は残すべきではありませんでした」

柴田おじい様は一時何を言えばいいのか分からなくなった。

この孫は、血縁の情が最も薄く、何をするにも自分の気分次第のようだった。

ただ、柴田陸信が柴田裕香を追い出すために、自分の両親を国外に送るという不道徳な行為まで平気でやってのけるとは思わなかった。

「お前の母さんは一昨日、ここで半日泣いていたぞ。知らない人が見たら、私が死んだと思うだろう」柴田おじい様は口角を引きつらせた。

「おじい様が気に入らないなら、彼女も国外に送ることができますよ」柴田陸信は淡々と言った。

まるで今日の天気について話しているかのような口調だった。

「そんなことは必要ない、必要ない」