方山賢一が去った後も、柴田おじい様は灰原優歌を呆然と見つめていた。
この孫娘が、何だか見知らぬ人のように感じられた。
以前の優歌は、内向的で憂鬱な性格で、友達もほとんどいなかった。でも今の優歌は、若々しさが際立ち、いつも意気揚々としている印象を与える。
この顔でなければ、目の前にいるのが優歌なのかどうか疑ってしまうところだった。
外で待っていた柴田裕香は、方山賢一を引き止めて、何があったのか知りたがった。
しかし方山賢一は冷たい表情のまま立ち去り、余計な言葉は一切交わさなかった。
「灰原優歌が方山先生に何か言ったんじゃないの?」柴田の母は拳を握りしめ、真っ先に灰原優歌のことを思い浮かべた。
「お母さん、焦らないで。彼女が知り合いの医者におじい様の手術をさせたいというなら、様子を見守りましょう。」
柴田裕香の目に暗い色が宿り、両手で拳を握りしめた。
「裕香、あなたには申し訳ないことをしたわね。」柴田の母は柴田裕香の手を取った。
本来なら、裕香がすでに医者を見つけていたのに、灰原優歌は何を見せびらかしたいのか、自分で探すなんて!
「お母さん、私はそのことは気にしていません。優歌もおじい様のことを考えてのことだと信じています。」
柴田裕香は俯き、少し無理して笑顔を作りながら言った。「ただ、先日兄さんのオフィスに履歴書を送ったんですが、一次選考で落とされてしまって。」
「兄さんは...本当に変わってしまったみたいです。」
柴田裕香のルックスと知名度からすれば、一次選考で落とされるはずがなかった。
それを聞いた柴田の母も怒りを爆発させた。
「みんな、本当に天に向かって唾を吐くようなことをしているわ!」
中にいる柴田おじい様がいなければ、今すぐにでも灰原優歌に問いただしたいところだった。一体どんな魔法をかけたというの、柴田裕也と柴田浪に!!
この二人が家族との縁を切ってまで、彼女を守ろうとするなんて!
「裕香、安心して。最後には、きっと彼らもあなたの良さに気付くわ。」柴田の母は愛おしそうに彼女の頭を撫でた。
柴田裕香は柴田の母を抱きしめた。「お母さん、私には今、お母さんしかいないの。」
「バカな子ね。」
……
昼時。
灰原優歌は学校に戻り、午前中の欠席届を出した。