第276章 彼女を可愛がっているのね

伊藤西紀は尋ね続けた。「どこの学校?」

「永徳よ」灰原優歌は手元の作業をしながら答えた。

それを聞いて、伊藤西紀は後悔でたまらなかった!

あの時飛び級なんかしなければ、先生と同級生になれたのに!!

「ちょっと待って……永徳??」

伊藤西紀の笑顔が凍りついた。

先日、学校の上層部が彼女に永徳に行って講演をし、高校三年生に受験のアドバイスと励ましの言葉をかけてほしいと言っていたじゃないか??

「どうしたの?」

灰原優歌は顔を横に向け、伊藤西紀を見た。

伊藤西紀は激しく首を振り、無理に笑って「なんでもない」と言った。

だめだ、絶対に行けない!

壇上で講演をして、もし灰原優歌を見かけたら、きっと緊張して言葉が出てこなくなってしまう。

……

灰原優歌にはまだ金井雅守と話す用事があったので、時間も遅くなってきたため、伊藤西紀を先に帰らせた。