この言葉を聞いて、柴田裕也と柴田浪も思わず息を飲んだ。
兄貴は一体何をしようとしているんだ!??
宮廷クーデター!??
柴田の父と柴田の母が柴田裕香を出て行かせないなら、この二人を海外に送り出すって!??
これは凄すぎるだろう!!!
さすが祖父が言っていた、家業を継ぐのに最も相応しい男だ!!
この光景を見て、柴田裕也と柴田浪は尾てい骨から後頭部まで、爽快な風が駆け抜けるのを感じた!
すっきりして気持ちいい!!!
残念ながら、この素晴らしい場面を録画できなかった。
「柴田陸信、どういうつもりなの?天に逆らうつもりなの??」
柴田の母は信じられない様子で彼を見つめた。
柴田陸信は感情の起伏もなく、おそらく柴田の母がこんな反応をすることは予想していたのだろう。
彼は少し笑って、「そう言われれば、そうですね」
「陸信、よく考えなさい。これは...本当に正しいことなのか?」柴田の父は落ち着いた声で言った。
「お父さん、ご心配なく。私は一生、自分のした事を後悔することはありません」
柴田陸信は口元を歪めた。
その後、父と息子は見つめ合った。
一方は複雑な眼差し、もう一方は落ち着き払った様子。
夜の雨が降り注ぐ。
柴田陸信は目の前の少女が息も絶え絶えに泣いているのを見つめたが、その目には一片の憐れみもなかった。
「お前の学籍書類も既に変更させた。これからは、柴田家とは一切の関係がない」
「お兄さん、お兄さん、お願い!追い出さないで、柴田家のお嬢様でなくてもいいから、私を置いていって!??」
柴田裕香は柴田陸信の手を掴んで懇願した。彼女は全身びしょ濡れで、みすぼらしく惨めな姿で、目には涙が溢れていた。
しかし。
この光景を見て、柴田陸信は低く笑った。
この場面はあまりにも見覚えがある。
前世で、優歌が重病になった時も、この雨の日に、彼は車椅子から這い降りて、この女に跪いて、少しでも医療費を恵んでくれるよう、優歌を助けてくれるよう懇願した。
しかし最後に、彼女は彼の目の前でキャッシュカードを折った。
彼女は彼の顔の前に寄って笑いながら言った。「お兄さん、もうお兄さんじゃなくなったとしても、私は自分が駄目になっても他人には渡さない。分かった?」
……