「あなたのも、もちろんあるわ」
柴田陸信は彼女を横目で見て、突然唇を曲げた。
「お兄さんは私に何を用意してくれたの?」
柴田裕香は興奮した様子で、灰原優歌が精神病院から出てきて以来、次兄と三男は彼女にプレゼントを用意してくれなくなっていた。
「戸籍変更の証明書を用意しておいたよ」
柴田陸信のゆっくりとした一言で、柴田裕香の顔色が一瞬で青ざめた!
柴田の母も手に持っていたナイフとフォークを落としてしまい、すぐに立ち上がった!
「陸信、何を馬鹿なことを言っているの?!」
その時。
柴田裕也と柴田浪は静かに座って、感心した眼差しで柴田陸信を見つめていた。
さすが長兄!
「母さん、あなたの娘は他人のものでもいいけど、柴田家のお嬢様は灰原優歌しかいない」柴田陸信はワイングラスを置き、薄い唇を拭った。
むしろ、この上品で優雅な様子が、より人々の心を不安にさせた!
しばらくして。
柴田陸信は横から戸籍変更の書類を取り出し、金縁の眼鏡をかけた。
男は相変わらず上品で端正な様子で、ゆっくりとした口調ながら、少し冷たい声で言った。「今夜が過ぎれば、柴田裕香さんは柴田家を出ていくことになります」
「柴田陸信、あなた、よくも!!」
柴田の母は声を荒げ、怒鳴った。
「いや、違うな」
柴田陸信は柴田の母を無視し、再び唇を曲げて笑いながら言った。「柴田裕香という名前は、優歌のために用意したものだ。優歌は使わないとしても、あなたのものであるべきではない」
「お兄さん、あなた……」
柴田裕香は顔色を失い、すぐに柴田陸信の腕を掴んで、体全体を震わせながら、泣き声で言った。「お兄さん、どうしてあなたまでこんな風になってしまったの?私は何もしていないのに、どうして私を追い出すの?」
柴田陸信は彼女を見つめ、突然唇を歪めた。「柴田という姓は、珍しくない。そうであれば、その名前を残したければ残してもいい。でも今日からは、柴田裕香の柴田は、雲城の柴田家とは無関係だ」
柴田裕香はそれを聞いて、血の気が完全に引いた!
かつて、灰原優歌が見つかった時、柴田家は彼女の実の父親も見つけた。その精神病院の院長だった。
しかし柴田裕香は実の父親が精神病院を経営し、しかも違法な事をしていたことを嫌悪し、ずっと帰ることを拒んでいた。