やはり。
兄の気性は、本来から捉えどころがなかった。
柴田裕也と柴田浪は、灰原優歌に挨拶をしてから、名残惜しそうに去っていった。
灰原優歌は壁にだらしなく寄りかかり、退屈そうに壁を軽く叩いていた。
「まだ帰らないの?」
土屋遥は少し意外そうだった。
「お兄さんが中で個人面談してるの」
灰原優歌は彼を見て、「ご両親は来なかったの?」
「両親は海外にいて、おばあちゃんは今日用事があって来られなかったんだ」
それを聞いて、灰原優歌は頷いた。「じゃあ、早く帰った方がいいよ」
「中にいる人、君の実の兄じゃないよね?」土屋遥は突然尋ねた。
灰原優歌は隠すつもりはなかった。「うん」
土屋遥の目が暗くなり、何を考えているのか分からなかった。「分かった。じゃあ早く帰りなよ。僕は先に行くから」