第259章 そんなに優歌をいじめるわけないよ

やはり。

兄の気性は、本来から捉えどころがなかった。

柴田裕也と柴田浪は、灰原優歌に挨拶をしてから、名残惜しそうに去っていった。

灰原優歌は壁にだらしなく寄りかかり、退屈そうに壁を軽く叩いていた。

「まだ帰らないの?」

土屋遥は少し意外そうだった。

「お兄さんが中で個人面談してるの」

灰原優歌は彼を見て、「ご両親は来なかったの?」

「両親は海外にいて、おばあちゃんは今日用事があって来られなかったんだ」

それを聞いて、灰原優歌は頷いた。「じゃあ、早く帰った方がいいよ」

「中にいる人、君の実の兄じゃないよね?」土屋遥は突然尋ねた。

灰原優歌は隠すつもりはなかった。「うん」

土屋遥の目が暗くなり、何を考えているのか分からなかった。「分かった。じゃあ早く帰りなよ。僕は先に行くから」