そのとき。
皆それぞれ思うところがあった。
ほとんどの人が、灰原優歌が突然翻意したのは、勝てないと思ったから、いいところで引き下がったのだと考えていた。
森谷美貴の運が悪かった。相手の兄が教えた問題を選んでしまったのだから。
「いつも拾い物ばかりできるわけじゃないでしょう」と誰かが小声で話し合っていた。
「そうね、この大会には高校2年生と3年生も参加するって。1組の柴田裕香も申し込んだし、3年1組の内田和弘も出るんだって」
「マジかよ……灰原優歌が最下位になったら、かなり恥ずかしいことになるね。内田和弘と柴田裕香は遥ちゃんラブラブなのに、二人とも彼女を圧倒することになるし……」
「本当にそうだよね」
……
これらの言葉を聞いて、土屋遥は眉をひそめ、もう一度灰原優歌を見た。