第330章 チンピラはワルが怖い

灰原優歌は横目で見ると、どこかで見覚えのある人物だった。

昨夜会ったような気がする。

「灰原さん、こんにちは」

千田郁夫は唇の端を上げ、端正で若い顔立ちに温和な雰囲気が加わり、戦区の人というよりも、むしろ学者の家系のような印象を与えた。

光輝が皮肉を言う間もなく、灰原優歌がゆっくりと言った。「ここを見つけるのに、随分時間がかかったでしょう？」

「どうしてわかったんですか？？」

光輝は目を見開いた。まさか灰原優歌に気づかれていたとは！

以前は、偵察中でさえ、彼らの気配に気づく人はほとんどいなかったのに。

しかしその言葉が終わるや否や。

隣にいた千田郁夫が冷たい目で彼を見つめた。光輝はすぐに口を閉ざした。

「先生！先生、助けてください！この女は狂っています！！」千田郁夫を見るなり、林建己は大胆になった。

彼は憎々しげに灰原優歌を見つめ、「この女は俺の仲間を殴って、今度は俺にも手を出そうとしています！彼女の手にある刃物を見てください！！」

光輝はその言葉を聞いて、千田郁夫を見た。「千田兄さん、灰原優歌は故意に……」危害を加えようとしています。

言い終わる前に、千田郁夫は一歩後ろに下がり、ゆっくりと笑みを浮かべた。「灰原さん、あなたのことを片付けてから、ゆっくり話しましょう」

その言葉を聞いて、林建己は呆然とした！光輝はさらに信じられない様子で振り向いて、千田郁夫を見つめた。

「千田兄さん、これは規則に反しますよ」

「帰ったら罰を受けます」

千田郁夫は何の気なしに言い、まったく気にしていない様子だった。

彼の現在の主な目的は、Y.G.を見つけ出すことだ。一介のチンピラのために灰原優歌の機嫌を損ねるのは、価値がない。

人が死なない限り、彼女の好きにさせておけばいい。

光輝は口を開きかけたが、結局何も言えなかった。

「千田さんは話が分かる方ですね」

灰原優歌は軽く笑い、再び物憂げな目を林建己に向けた。

林建己は恐怖に包まれ、彼が許しを請う間もなく、悲鳴が化学工場全体に響き渡った。

背筋が凍るような声だった。

光輝でさえ、若い女性がこれほど残虐な手段を使うのを見て、震え上がった。

「最後の質問です。これは早押し問題。最初に答えた人だけが、立って帰れます」