戻ってきた苗木おばさんはこの光景を見て、思わず口を押さえて笑いながら台所へ向かった。
……
未明。
万物が静まり返り、夏の夜風が大地のすみずみまでそよいでいた。
寝室で、突然携帯の着信音が鳴り響いた。しばらくすると、白い手が机の上の携帯を取り、電話に出た。
「何か用?」
おそらく灰原優歌の語気があまりにも不機嫌だったため、ローシェルにいる相手は言葉は分からなくても、その意味は察することができた。
「灰原さん、私はドレイニーですが、おはようございます……」
ドレイニーの言葉が終わるや否や、灰原優歌は一言も無駄にせず、電話を切り、携帯の電源を切って机の上に投げた。
この時、灰原優歌は眉をひそめ、目を閉じていても彼女の殺気を感じることができた。
ローシェル。
電話を切られたドレイニーは、目を見開き、こんな扱いを受けるとは信じられなかった。