夜の寒さが増していく。
ソファに座る人は、片手で頭を支え、瞳に波もなく、外の時折風に揺れる木々を静かに見つめていた。
夜が明けた。
久保時渡が階段を降りてきたとき、ソファで眠る少女が目に入った。黒い巻き毛が無造作に広がり、眉間には不安げな皺が寄り、目尻は薄く赤みを帯びていた。
男の冷ややかな視線が灰原優歌の上に留まり、彼女の前に立ち尽くした。
どうしてここで寝ているんだ?
しばらくして。
彼は灰原優歌の前に近づき、長く整った指でネクタイを緩め、片膝をついて、不安げに眠る少女と目線を合わせた。
「優...」
久保時渡の眼差しが深くなり、立ち上がろうとした瞬間、眠っている彼女に引き寄せられ、逞しい腰を抱きしめられた。
予期せぬことに、久保時渡は少女の両手に引き寄せられた。彼は反射的にソファに手をつき、彼女を起こさないように気を付けた。
男は思わず笑みを漏らし、低く磁性のある声で、彼女の鼓膜を揺らすように言った。「子供、君は痴漢かい?」
「渡様...」
久保時渡を迎えに来た曽田旭は、この刺激的な場面に出くわした。
曽田旭の視点からは、その小悪魔が両手で渡様の腰をしっかりと抱きしめており、渡様もその誘惑に抗えず、すでに小悪魔をソファに押し付けているように見えた...
朝からこんなことをして、いいのだろうか??
曽田旭は体が硬直し、自分が知りすぎてしまったような気がした。
久保時渡は後ろの曽田旭に気付き、さりげなく彼を見やった。「お嬢様の病欠の手続きを頼む。」
そう言うと。
久保時渡は振り返り、灰原優歌の腰に回された手をゆっくりと解き、低く磁性のある声で、優しくあやすように言った。
「優歌、寝ながらお兄さんを抱きしめるのは止めようか。起きてからにしよう。今はベッドで寝かせてあげるから、いいかな?」
おそらく久保時渡の声を聞いたのか、灰原優歌は少し目を覚まし、抱きしめていた手を緩め、細い隙間から目を開けた。
男が彼女の手を自分の首に回し、彼女の膝の下に手を入れ、軽々と抱き上げるのを見た。
「お兄さん。」
灰原優歌は突然そう呼び、自然に久保時渡の首筋に顔を寄せ、目を閉じた。
しかしその仕草に、男は体を硬直させ、首筋のしびれるような感覚に、思わず喉仏が動いた。
この様子を見ていた某人は「...」