三浦雅子は通りで内田和弘とばったり出会った。
「和弘!」
三浦雅子は期待を込めた眼差しで内田和弘を見つめ、「A.M.計算研究所の皆さんは承諾してくれたの?いくらでも構わないって、伝えてくれた?」
「雅子さん、申し訳ありません。A.M.計算研究所には確かに二人ほど可能な人がいます。一人は金井様で、もう一人は……以前私も接触したことのある人です。」
内田和弘は落ち着いた声で言った。「でも、その方は承諾してくれませんでした。」
それを聞いて、三浦雅子は内田和弘の手を握り、「和弘、その人が誰なのか教えて!私が直接会いに行くわ!」
三浦国富は継父だったが、三浦雅子にとても良くしてくれ、実の娘のように接してくれた。だから三浦雅子も三浦家に何か起こることを望んでいなかった。
「その方はY.G.ですが、会うことは難しいでしょう。A.M.研究所は彼女を非常に重要視していて、セキュリティも万全です。」
内田和弘は諦めたような表情で言った。「彼女は先日、数百億円規模のプロジェクトを受注したばかりです。そんな人物を説得できると思いますか?」
「本当にもう望みはないの?」三浦雅子は全身が冷え切ったような気がした。
もしそうなら、セレブ界での彼女の地位も大きく下がることになるだろう。
「……申し訳ありません。その方は私の依頼を承諾してくれませんでした。」内田和弘はため息をついた。
……
病院。
灰原優歌はゆっくりとリンゴの皮を剥きながら、ベッドの上の柴田おじい様を見た。
「おじい様、誰に電話をかけているの?」
午前中ずっと、柴田おじい様がコンピューターに詳しい人を知らないかと尋ねているのを聞いていた。
「昔の友人たちにね。」
柴田おじい様は顔を曇らせ、「お前の三番目の兄さんのことだよ。大会が延期になって、すっかり落ち込んでしまってね。誰か手伝ってくれる人を探して、そのバグを直してもらおうと思ってね。」
灰原優歌の瞳が暗くなり、リンゴの皮を剥く手の動きも遅くなった。
しかし、灰原優歌がリンゴを見ずに皮を剥いているのを見て、柴田おじい様は心臓が飛び出しそうになった。「あらら、お嬢さん、やめなさい!もう言ったでしょう、皮を剥く必要なんてないって。もし手を切ったらどうするの?」