「柴田裕香のことを買いかぶりすぎよ。国際音楽協会なんてそう簡単に入れるものじゃないでしょ?」
誰かが笑いを抑えきれずに言った。「国際音楽協会のメンバーって、みんな教科書に作品が載っている人たちよ。彼女に何の作品があるっていうの?」
「でもYUNだって入ったじゃない?」クラスで柴田裕香のことが好きな男子が反論した。
「彼女がYUNと比べられるわけない」
二人が言い争いを始める前に、隣で誰かが小声で言った。「ローシェルにいる友達が言うには、向こうの文部省がYUNの著作権を買おうとしているらしいわ……」
ただし、まだ売る許可は下りていないけど。
それを聞いた皆は沈黙に包まれた。
ローシェルが自国の曲の著作権を買おうとしている???
まさに生きているうちに見られるとは思わなかった出来事だ。
だから国際音楽協会がそんなに必死に引き抜こうとしているのか。
「YUNが一体誰なのか本当に知りたいわ。まるで突然現れたみたいよね。覚えてる?以前の吉田麻奈未は二流だったのに、YUNと組んだ途端にトップスターになったのよ!」
「それには理由があるのよ。十八歳でピアノツアーを始めた人だっているけど、そんなに大きな波紋は起こさなかったでしょう」
その言葉は、ちょうど教室に入ってきた柴田裕香の耳に入った。彼女の目に一瞬の暗さが走った。
彼女は拳を握りしめ、爪が肉に食い込んだ。
またあのYUNのことか。
突然、柴田裕香は吉田麻奈未が前に言った言葉を思い出した。あの人は、自分と同じくらいの年齢だと。
もし吉田麻奈未が嘘をついていないのなら、YUNがいつか皆の前に姿を現したとき、自分は笑い者になってしまうのではないか!??
そう考えると、柴田裕香は顔色を失い、全身が小刻みに震えた。
ダメ!
絶対にそんなことは起こさせない!!
柴田裕香はドアを押し開け、冷たい表情で自分の席に向かった。さっきまで彼女の陰口を叩いていた女子は、顔を真っ青にして何も言えなくなった。
教室内は静かで気まずい雰囲気に包まれた。
柴田裕香は席に座り、あの人にメッセージを送った。
【YUNの新しい楽譜を手に入れて。何でもするから、お願い】
このメッセージを打つ時、柴田裕香の手は震えていた。
こんなことはしたくなかったけど、人の笑い者になるのも嫌だった!