その言葉に、柴田裕香は心を揺さぶられた。
本当に灰原優歌を柴田家から追い出せるのだろうか?
「あなたの三人のお兄さんは、以前のように裕香だけを可愛がってくれるわ。裕香、そうなってほしくないの?」
柴田裕香は唇を噛み、目の奥に憎しみの色が浮かんだ。
そうなってほしい。
灰原優歌さえいなければ、自分は追い出されることもなく、野良犬のような扱いを受けることもなかったはずだ。
「裕香、それに私たちは素敵な友達になれるわ。」
その人は優しく諭すように言った。「こうしましょう。国際音楽協会の会員枠を一つ、私からの最初のプレゼントとしてあげるわ。どう?」
柴田裕香は体が固まった。
彼女は前からこの人が柴田家とは比べものにならないほど高貴な身分の持ち主だと知っていた。
しかし、ニレイ十八令嬢舞踏会も国際音楽協会も、この人が枠を用意できるとは思わなかった。
「本当にできるんですか?」
柴田裕香は探るように尋ねた。
その人は笑い、銀の鈴のような心地よい声で、さりげなく問い返した。「どうしてできないことがあるの?」
……
永徳。
灰原優歌は戸田霄からのメッセージに目を通した。
【優歌、今回のアルリアの会員募集で、主任審査員を務めてみない?】
灰原優歌は眉間にしわを寄せ、即座に断った。
【忙しいわ。】
すぐに、戸田霄は再び説得を試みた。
【優歌、君が来たばかりだから、少しは権限を譲らないといけないんだ。この募集審査もそれほど面倒じゃない。】
【君以外にも二人の補助メンバーがいるから、そんなに疲れることはないよ。】
【協力してくれたら、今後の会費は免除するよ。どう?】
最後の一文を送信した時、戸田霄は吉田麻奈未に騙されたと感じた。
たかが一、二万の会費なのに、灰原優歌が気にするはずがない。
しかし、すぐに。
戸田霄は彼女の返信を見た。
【いいわ。】
戸田霄:「……」
大物なのに、最低限のメンツも必要ないのか?
……
1年A組
「今日はどうしたんだろう?柴田裕香がずっとピアノ室にいて、あまり出てこないみたい……」
「国際音楽協会のためだって。」誰かが言った。
それを聞いて、クラスの多くの生徒が首をかしげた。
「国際音楽協会って何???」