第353章 匿名脅迫

灰原優歌の眉が少し動き、指先で本の表紙を撫でた。

大衆の目に触れるこのような事には、彼女は興味がなかった。

突然。

携帯が鳴り、灰原優歌はすぐに立ち上がった。「おじい様、ゆっくり休んでください。私は用事があるので先に帰ります。」

灰原優歌の断りを見て、柴田おじい様は彼女が去っていくのをただ見送るしかなかった。

……

灰原優歌が外に出ると、電話をかけてきたのは金井雅守だった。

電話で、金井雅守は多くを語らず、ただ研究所に来るように言っただけだった。

A.M.計算研究所。

灰原優歌は入るなり研究室に向かい、金井雅守の表情が重いのを見た。

「どうしたんですか?」

灰原優歌も初めて、金井雅守がこれほど急いで彼女を呼び出すのを見た。

「このチップに、問題がある。」

金井雅守は封印されたチップに目を留め、表情も良くなかった。「さっき、あなた宛ての物が届いた。」

「私宛て?」

灰原優歌は横目で段ボール箱を見て、受取人が確かに彼女であることを確認した。

【受取人:Y.G.】

ただし、この郵便物は明らかに正規の宅配会社からのものではなかった。

差出人がないからだ。

灰原優歌の瞳が揺れ、少し笑って、箱を開けようとした。

「優歌、触らない方がいいんじゃないか?」

金井雅守は灰原優歌を呼び止め、中に変なものが入っているのではないかと心配した。

「大丈夫です。」

灰原優歌はハサミを取り、ゆっくりと箱を開けた。

箱を開けた瞬間、腐臭が漂ってきた。

中には切り取られた舌と、血まみれの眼球が一対入っていた。

「優歌!」

金井雅守は顔色を変え、すぐにもこの恐ろしいものを投げ捨てようとした。

「これは千田郁夫に処理してもらいましょう。」

灰原優歌の上がっていた眉尻が少し下がり、感情の起伏もなく、テープを見つけると再びそれを封をした。

誰も、これが闇に潜んで命を落とした人々のものかどうかわからない。

しかし今はっきりしているのは。

彼らは廃棄されていないチップを通じて、千田郁夫たちがA.M.計算研究所に助けを求めていることを知った。

そして【Y.G.】に対して示威と脅迫をしているのだ。

ただし、彼らもやりすぎることはできず、A.M.計算研究所と正面から対決するのは避けたがっている。