灰原優歌の眉が少し動き、指先で本の表紙を撫でた。
大衆の目に触れるこのような事には、彼女は興味がなかった。
突然。
携帯が鳴り、灰原優歌はすぐに立ち上がった。「おじい様、ゆっくり休んでください。私は用事があるので先に帰ります。」
灰原優歌の断りを見て、柴田おじい様は彼女が去っていくのをただ見送るしかなかった。
……
灰原優歌が外に出ると、電話をかけてきたのは金井雅守だった。
電話で、金井雅守は多くを語らず、ただ研究所に来るように言っただけだった。
A.M.計算研究所。
灰原優歌は入るなり研究室に向かい、金井雅守の表情が重いのを見た。
「どうしたんですか?」
灰原優歌も初めて、金井雅守がこれほど急いで彼女を呼び出すのを見た。
「このチップに、問題がある。」
金井雅守は封印されたチップに目を留め、表情も良くなかった。「さっき、あなた宛ての物が届いた。」