第373章 この子は俺のもの（修）

追いかけてきた福永健仁は灰原優歌をじっと見つめ、知的な目元に笑みを浮かべていたが、その眼差しは不快感を与えるものだった。

それを聞いて。

灰原優歌は先ほどの久保時渡との会話の表情を消し、美しい目元は冷たさを帯びていた。

彼女には分かっていた、この男の目的が。

突然。

隣の男が灰原優歌の手を取った。温かい手のひらに、優歌は一瞬戸惑った。

久保時渡は気だるげな口調で、「必要ない」

福永健仁は手にした煙草を消すと、灰原優歌への興味を隠そうともせず、その目には所有欲が満ちていた。

「渡様、今回は恩を売らせてもらいましょう。この娘を譲ってもらえませんか？」

彼には分かっていた。この少女が久保時渡にとって、他の女とは違うということが。

しかし久保時渡の立場なら、どんな女でも手に入れられるはずだ。

ところが。

男は軽く嘲笑うだけで、その声には軽蔑と冷たさが混ざっているようだった。

彼は少女の手を握ったまま、低く磁性のある声で、さりげなく率直に言った。「福永健仁、この子は俺のものだ」

それを聞いて。

福永健仁は一瞬驚いた様子で、明らかに久保時渡からそんな答えが返ってくるとは思っていなかった。

「久保社長、あなたは女性に執着するタイプではないはずですが」福永健仁は拳を握りしめ、まだ灰原優歌に視線を向けたままだった。

「福永健仁、お前の好きなように狂えばいい」

男の上がった目尻は魅惑的で、薄い瞳には温もりが消え、ゆっくりとした声は知的でありながら冷たかった。「だが、俺の子に手を出す者は、この手で半殺しにしてやる」

灰原優歌が横目で見ると、男の優美な横顔が目に入った。その様子は気だるげでありながら、より一層心を揺さぶるものだった。

「久保社長、彼女が吉村鈴に似ているのはご存知のはずです...」福永健仁は不満げに言った。

久保時渡は嘲笑して、「俺の可愛い子は、誰にも及ばない。

俺の人に目を付けるな。福永お爺様がいようと、お前に人としての道を教えてやることには変わりはない」

そう言うと、久保時渡は灰原優歌を連れて立ち去った。

後には、福永健仁が恐ろしいほど深い眼差しで、両手を強く握りしめたまま立ち尽くしていた。

外で。

灰原優歌は久保時渡を見て、「お兄さん？」

彼女は初めて、久保時渡のこんな様子を見た。