「あなたの先生は……本当に何でもできるのね」
雲大教授はそれを聞いて、伊藤西紀の家が彼女に素晴らしい先生を見つけたのだと思った。
「そうですよ、そうですよ」
試合が続いていなければ、雲大教授は熱狂的なファンのような伊藤西紀を追い出したいところだった。
「よし、では引き続き問題を解きなさい。先生の顔に泥を塗らないように」
雲大教授は逃げるように立ち去った。
伊藤西紀:「……」
その後の問題では、まるで伊藤西紀がチートを使っているかのように、すべて彼女の独壇場となった。
会場の数学部の学生たちはこれを見て、顔が麻痺しそうになり、大胆な考えが浮かんだ——
もしかして、情報工学を学ぶ人は数学が得意なのだろうか?
しかし、すぐにそれも違うと気づいた。
前回の雲大物理学部との交流戦でも、伊藤西紀が会場を支配していたのだ。
数学部の学生:「……」
一体これは何という恐ろしい存在なのか??
しかし。
伊藤西紀が得点差を縮めるまであと2問というところで、突然止まった。この問題は見覚えがあるような気がしたが、どう解けばいいのか分からなかった。
伊藤西紀がついに解答を止めたのを見て、暗い表情のレノもほっと息をついた。
彼は唇の端を少し上げ、壇上で迷っている少女を物憂げに見つめた。
確かにこの問題は簡単ではない。
しかし、雲大にこの問題を解ける人がいるとは思ってもみなかった。
そのとき。
伊藤西紀は少し躊躇した後、ゆっくりと解答の手順を書き始めたが、途中で進められなくなった。
彼女は口を尖らせ、突然振り向いて、誰かを期待するような目で見た。
後ろの席で視線が合った人:「……」
しばらくして。
灰原優歌がその問題に目を通し、伊藤西紀を下がらせようとした時、レノが意図的に言った。
「見たところ、雲大の学生もたいしたことないようですね」
伊藤西紀はそれを聞いて、レノを見る目が冷たくなった。
そして。
伊藤西紀が口を開く前に、後ろの席から物憂げな声が響いた。
「では、学生さんは自分で上がって解きますか?」
その言葉が落ちた。
会場の雰囲気が一瞬で凍りついた。
皆が思わず振り返って灰原優歌を見た。まさかこのタイミングで灰原優歌が口を挟むとは思わなかった。
レノの目に一瞬の動揺が走ったが、すぐに隠した。