その言葉を聞いて。
灰原優歌が否定する間もなく、突然腰を抱かれ、天地がひっくり返るような感覚!
男は軽々と彼女を抱き上げた。
灰原優歌はバランスを崩しそうになり、思わず男の首に腕を回した。
「何をするの??」
男の深く磁性のある声が、彼女の耳元で笑みを含んで響いた。その口調は軽やかで、挑発的で魅惑的だった。
「優歌が疲れてるんだろう?だから抱いて帰るよ。」
「???」
灰原優歌が目を上げると、男の恥じらいのない知的な横顔が目に入った。
彼女は黙り込んだ。
この顔のせいだ。最初からあまりにも欺瞞的だった。
……
あらゆる手を尽くしたが、男は彼女を降ろそうとしなかった。
リビングに戻るまで。
久保時渡は彼女をソファーに下ろすと、じっと見つめ続けた。
灰原優歌:「……二階に上がってもいい?」