その言葉を聞いて。
灰原優歌が否定する間もなく、突然腰を抱かれ、天地がひっくり返るような感覚!
男は軽々と彼女を抱き上げた。
灰原優歌はバランスを崩しそうになり、思わず男の首に腕を回した。
「何をするの??」
男の深く磁性のある声が、彼女の耳元で笑みを含んで響いた。その口調は軽やかで、挑発的で魅惑的だった。
「優歌が疲れてるんだろう?だから抱いて帰るよ。」
「???」
灰原優歌が目を上げると、男の恥じらいのない知的な横顔が目に入った。
彼女は黙り込んだ。
この顔のせいだ。最初からあまりにも欺瞞的だった。
……
あらゆる手を尽くしたが、男は彼女を降ろそうとしなかった。
リビングに戻るまで。
久保時渡は彼女をソファーに下ろすと、じっと見つめ続けた。
灰原優歌:「……二階に上がってもいい?」
男は物憂げな口調で、「ダメ。」
灰原優歌:「……」
少女が黙ったままでいるのを見て、男は思わずのどぼとけを動かし、声を落として笑った。
「もう少しいても、ダメなの?」
灰原優歌は先ほどの彼の態度を真似て:「ダメ。」
しかし。
男は彼女をしばらく見つめた後、低く笑い出した。
突然身を乗り出し、語尾を引き延ばしながら、低く艶のある声で、まるで露骨に誘っているかのように言った。
「優歌の言う通り、何もかもダメってこと?」
「うん。」
灰原優歌は顔をそむけ、理性を失いそうになるその顔を見まいとした。
男の唇の端がかすかに上がり、軽薄ではないが挑発的に、「じゃあ、甘えるのもダメ?」
「ダメ……」
灰原優歌は言いかけて、はっと気づいた。
彼女は目尻を動かし、思わず目を上げたが、男の半ば暗く艶めかしい瞳と出会ってしまった。
まさに足がすくむほどの色気だった。
それなのに男は漆黒の瞳で、なおも彼女を見つめ続けていた。
彼はセクシーなのどもとを軽く動かし、笑みをもらしながら、だらしなく手を伸ばして彼女の頬を軽く撫でた。「うん、本当に可愛いね。」
「……」
灰原優歌はしばらくして、やっと彼の唐突な褒め言葉に反応した。
私、いつ甘えたっけ???
灰原優歌は無表情で目を上げ、「久保時渡。」
明らかに、少女は爆発寸前だった。
「うん、なに?」