「もういいよ、そんなにじっと見つめないで」
柴田おじい様は冷笑して言った。「普段は忙しくて影も形も見えないのに、今日は自ら残ると言い出すとはね。やはり優歌のためだったか」
柴田裕也:「……そうでもない」
柴田おじい様はふん、と笑い、三人の孫をじっと見つめた。
今日なぜこんなにも揃っているのか、分からないはずがない。
優歌がいなければ、この三人が本邸に長居するはずがないのだ。
ただし。
この三人の実の兄たちよりも、優歌は久保家の若い世代の方が好きなのは明らかだった。
本邸を出た後。
曽田旭が前で運転していた。
久保時渡は物憂げな表情で、骨ばった指でネクタイを緩め、シャツの上二つのボタンまで外した。
その姿は妖艶でありながら、どこか軽薄な雰囲気を漂わせていた。
男は隣の少女を見やって、「優歌、さっきはなぜ怒ったの?」