しばらく我慢していた。
アルネはようやく言葉を絞り出した。「余計なことをしてしまいました。すぐに追加しておきます。」
「自分の立場をわきまえておけばいいわ。」
灰原優歌は物憂げに笑い、すぐに電話を切った。
これにアルネは怒り心頭に発した。
「このYUNときたら!まさに若気の至りだ!!」
金谷智志は黙々とお茶を一口飲んで、「でも彼女には才能があるよ。」
「才能があったって、彼女のような……」
アルネが言い終わらないうちに、金谷智志は突然手を止め、茶碗を強く机に置き、パソコンに顔を近づけた。
107番の老人の演奏方法をはっきりと見たいかのようだった。
「何をしているんだ?」アルネは彼の行動に驚いて、すぐに振り向いて尋ねた。
「彼の演奏方法を見てごらん……」
金谷智志も最初は、YUNの個人的な好みが少し奇妙だと思っていた。なぜこんな平凡な老人を選んだのか。
しかし間もなく、彼は違和感に気づいた。
「彼が弾いているとき、指と肘の動き……それに、今のフレーズ……二、三百個の音符があったように見える。」金谷智志は呆然としていた。
最初は、この作曲とメロディーが平凡だと思っていた。むしろ……魅力的ではないと。
しかし今よく聴いてみると、非常に演奏が難しいオリジナル楽譜だった。しかも、かなり強い感情的な影響力を持っていた。
アルネは表情を変え、これが見落とされそうだった一人だとは思わなかった。
しかしすぐに。
彼はまだ軽蔑的だった。「もうこんな年なのに、音楽協会に来て何になる?
それに、この曲は私たちが注意深く聴かないと違いに気づかない。一般の聴衆はどうなんだ?」
……
灰原優歌はこの楽譜に興味があったが、おそらく曲調が異質なため、磨きをかける必要があった。
彼女は二十分ほど書き、その老人のメールアドレスを見つけ、送ろうとした時、一瞬躊躇した。
しばらくして。
灰原優歌は最後に、もう一段の文章を打った。
【楽譜は素晴らしいです。次のラウンドを楽しみにしています。】
打ち終わると、送信を済ませ、パソコンを閉じた。
そしてこの時。
薄田家。
雰囲気は特に異様だった。
薄田修司は表情の優れない薄田の父と薄田の母を一瞥し、口を開いた。
「おじいさんが好きなら、やらせてあげればいい。」