第450章 あなたの時渡兄さんに気を付けて

「私は大丈夫よ」

吉田麻奈未は拳を握りしめたが、表情は穏やかなままだった。

「それはよかった」

薄田京香は笑いながら言った。「この二、三年会わなかった間に、麻奈未はもっと綺麗になったわね」

吉田麻奈未は無表情のまま、静かに彼女を見つめていた。

案の定。

次の瞬間。

薄田京香は優しく上品に笑いながら言った。「でも、私のことを恨んでいないならいいわ」

「あなたのことを恨む？何を？」

吉田麻奈未が問い返すと、薄田京香は一瞬戸惑い、そして軽く笑い出した。

「麻奈未、昔と変わらないわね。素直で可愛らしい」

薄田京香は彼女に近づきながら、優しく囁くように続けた。「あの時、私が寝ていた時...」

「薄田京香、人を不快にさせるのが好きなの？」吉田麻奈未は冷たい口調で、薄田京香の言葉を遮った。

「聞きたくないの？麻奈未、私はただ...」

薄田京香が言い終わる前に、突然の声が再び彼女の言葉を遮った。

「麻奈未」

吉田麻奈未は聞き慣れた声を聞いて、なぜか安心し、近づいてくる灰原優歌の方を見た。

「優歌、あなたも来たの」

吉田麻奈未の警戒心と冷たさは完全に消えていた。

その様子を見て。

薄田京香も思わず振り向いて、話しかけた人を見ようとした。

しかし目を上げた瞬間、薄田京香は全身が凍りついた。

目の前の少女はとても若く、淡い青色のワンピースを着ていた。チュールと青金色の大きな花の刺繍が装飾され、ウエストラインと絶妙なVネックは、少女らしい情感と色気を醸し出していた。

黒髪は緩やかなウェーブを描き、肩に落ちかかり、その艶やかで魅力的な顔は人の心を惑わせるほどだった。

一瞬のうちに、薄田京香は大きな危機感を覚えた。

「うん」

灰原優歌は自然に吉田麻奈未の手を取り、中へ歩き出した。薄田京香には一瞥も与えなかった。

薄田京香はそれを見て、心の中でほっとし、思わず笑みを漏らした。

なんだ、気まぐれな小娘に過ぎないのね。

吉田麻奈未のために、彼女を一目も見ずに冷たく立ち去るなんて。

...

「優歌、私があの人と話しているのを見たでしょう？」吉田麻奈未は緊張した様子で尋ねた。

「うん」

「それなのに、そのまま行っちゃうの？」

灰原優歌は彼女を横目で見て、「あなた、彼女のこと嫌いなんでしょう？」

「...そんなに分かりやすかった？」