話し終わると、おしゃれな男性は笑いながら言った。「柴田社長が妹さんを可愛がっているという噂は聞いていましたが、今日初めて実際に見させていただきましたね。
あ、そういえば、柴田社長にはもう一人妹が...」
話し過ぎたことに気づいたおしゃれな男性は、すぐに口を閉ざした。
目を上げると、案の定、柴田陸信の眼差しが冷たくなっているのを感じた。
しばらくして。
彼は体を横に向け、灰原優歌を見つめながら、彼女の長い髪を整えて、少し気のない様子で「行っておいで。
彼のデザインが気に入ったら、お兄さんがこのサロンを買い取って、今後はあなただけのデザイナーにしてあげよう」と言った。
おしゃれな男性:「...」
そこまでする必要はありませんよ、柴田社長。
ファッション界では誰もが頂点を目指している。一人だけのデザイナーになるということは、明らかに将来の可能性を制限されることだ。
「そんなに頻繁にパーティーには参加しませんから」
灰原優歌はそう言って、おしゃれな男性について奥へ入っていった。
奥の部屋で。
おしゃれな男性はほっと息をつき、この柴田家のお嬢様は柴田社長以上に冷淡なようだと気づいた。
さっきの会話も、まるで柴田社長がこの柴田家のお嬢様の機嫌を取っているかのようだった。
「柴田さん、あなた...」
「私は灰原です」
灰原優歌は言った。
「申し訳ありません、灰原さん」
おしゃれな男性は今、灰原優歌と二人きりになって、さっきよりもさらに重苦しい雰囲気を感じていた。
さすが柴田社長の実の妹だ...
まさに同じ血を引いているようだ。
「どのようなスタイルがお好みですか?」おしゃれな男性は尋ねた。
「どれでもいいです。派手すぎなければ」
「はい、わかりました」おしゃれな男性は安堵の息をつき、これからは専門的な話題に移り、徐々に余裕を取り戻していった。
...
2時間後。
プラチナパレス。
「麻奈未さん、あなたも来たのね。さすが薄田おじいさまのお顔が立つわ」
入り口で、ワインレッドのマーメイドドレスを着た吉田麻奈未が歩いてくるのを見て、グループになっていた令嬢たちが、すぐに近寄って話しかけた。