しかし次の瞬間。
皆は、柴田浪が若い女の子の前でゆっくりと片膝をつき、抱えていたお菓子や飲み物を全部彼女の膝の上に置くのを目にした。
柴田浪は無意識に首の後ろを怠そうに撫で、また低く笑い、少年らしい眉目が緩むと、何気なく不良っぽさが漏れ出た。
「優歌、兄さんはしばらく出られないから、楽屋で少し探してきたんだ」
ただの冷たい紅茶を渡された柴田おじい様は「……」
そして会場のファンたちは爆発寸前!!!
これがちゃんと試合をしない理由??!
女性ファンなんてもういらないの?!現場で恋愛宣言???
灰原優歌は柴田浪の手を見て、少し頷いた。「十分です、ありがとう」
少し躊躇してから、付け加えた。「三兄さん」
それを聞いて。
柴田浪の目尻が上がり、瞳の奥に深い光が揺れた。彼は唇の端を緩め、また怠そうに灰原優歌の前に腰を下ろし、手を伸ばして彼女の頭を撫でた。
「どういたしまして。後で三兄さんが優歌にトロフィーを取ってくるよ、いい?」
ちょうどその時。
楽屋のカメラマンがどう考えたのか、大スクリーンのカメラを直接灰原優歌の方に向けた。
二人の親密な仕草、そして普段の傲慢さを一変させた柴田浪の優しい眉目は、まるで恋愛宣言の前触れのように思わせた。
会場は悲鳴の渦に包まれた。
柴田浪のチームメイトたちは怒りで歪みそうだった!
なんでだよ、なんで???
みんなゲーマーなのに、キャプテンはどうして僕たちに内緒で、こんな美人な彼女を作ったんだ??!
「ひどすぎないか?俺たちが上で試合してるのに、一試合やっただけで消えて、彼女の世話してるなんて??!」
「お前、もっとひどいのは、あのお菓子が俺のだってことだ!俺の!!」太った男の子が、とても悲しそうに叫んだ。
あまりにも傷つく。
キャプテンはいつも、年を取ったら生活習慣病になるから食べ過ぎないようにと言っていた。なのに彼は??堂々と俺のお菓子を漁って、彼女にあげる!?
人としてどうなんだ??
皆はそれを聞いて、よく見ると、自分たちが持ってきたお菓子も、静かに灰原優歌の膝の上に置かれているのに気付いた。
チームメイトたちは憎々しげな表情で「……」
くそ、柴田め、死ね!
「待って!あの女の子、どこかで見たことないか??」
「まさか?お前もそんな可愛い妹に会えるわけないだろ?夢の中???」