小島茂は聞いて、何も言わなかった。
心の中では、何かが蠢いていた。
もし柴田浪の手に本当に問題があるなら、これからは柴田浪のチームは主力を失うことになる。そうすれば、彼には自分のチームを率いて、国内ナンバーワンのチームになるチャンスがある!
そう考えると、小島茂は思わず興奮を抑え、冷静さを保とうとした。
「様子を見てみよう。柴田浪が降りたのは、あの女の子のためだけかもしれない」
小島茂がそう言うと、メンバーも思わず灰原優歌の方を見て、先ほどの光景を思い出した。
これは確かに柴田浪のいつもの性格とは全く違っていた。
雰囲気が沈黙する中。
小島茂が顔を上げると、ちょうど楽屋に入ってくる灰原優歌の姿が目に入った。
彼の目の奥に不気味な光が走り、灰原優歌が中に入っていくのを見ながら、ただチームメイトの肩を叩いた。
「先に戻っていろ。この件は俺が対処する方法を知っている」
そう言うと。
小島茂は灰原優歌の後ろ姿を追いかけ、目の奥の軽蔑と皮肉がますます濃くなった。
まさか、この女が一人で楽屋に来る勇気があるとは思わなかった。
しかし。
この時、小島茂はすでに一つの決心を固めていた。
柴田浪がこの女の子をそれほど大切にしているなら、彼女に触れたらどうなるだろう?
柴田浪のこの女の子への気遣いからすれば、きっと試合を早く終わらせて、自分に文句を言いに来るはずだ。次のラウンドで、柴田浪は必ず自ら出場するだろう。
でも、もし柴田浪が怪我をしていたら……
どこに自ら試合に出る勇気があるというのか?
小島茂の口角の弧がより明確になった。
もし柴田浪が本当に怪我をしているなら、彼がeスポーツ界から追放される日も楽しみだ。
そう考えながら、小島茂はすでに灰原優歌の後をつけて、1階のエレベーターホールまで来ていた。
灰原優歌が中に入るのを見て、小島茂もすぐにエレベーターに乗り込んだ。
この時。
灰原優歌は小島茂をちらりと見て、艶のある唇が少し上がったが、目には笑みの色はなかった。
彼女は何気なく4階のボタンを押した。
隣の小島茂は、灰原優歌が押した階数を見てから、フッと笑った。
「4階は管理層だけど。お嬢さんは管理層の人を知っているの?」
灰原優歌は彼に一瞥もくれず、ただ静かに待っていた。
すぐに。
4階に到着。