森谷美貴の言葉は、クラス全員にはっきりと聞こえた。
「叔父に聞いたんだけど、この何十年間で満点を取れた人は二人しかいないの。一人は今、雲城大学で教授を務めている石川信方先生。もう一人はあなただけよ」
灰原優歌の瞳に一瞬暗い光が走ったが、感情を読み取ることはできなかった。
「そう?」
「石川信方教授は当時、全国統一試験で首席だったわ。739点で一位。二位とは十数点も差があったのよ」
森谷美貴は高慢な口調で、まるで自分のことを語っているかのように続けた。「もちろん、皆さんはこの点数を聞いても大したことないと思うでしょうね。
でも、石川信方教授の年の全国統一試験は、平均点が不合格だったのよ」
皆の頭に、ある考えが浮かんだ。
07年の統一試験のことだ!
誰もが07年の統一試験のことを鮮明に覚えている。それは他でもない、その年に試験問題が漏洩し、予備の試験問題が使用されたからだ。