「この問題が解けないなら、帰ってくるな!」
数学の先生は怒って一言放ち、教室に戻っていった。
その時。
灰原優歌と土屋遥の二人は手すりに寄りかかって、揃って宿題を補習していた。
「灰原様」
土屋遥が突然呼びかけた。
灰原優歌はまぶたも上げずに、「何?」
土屋遥はこっそり近づいて、小声で尋ねた。
「クリームパンどこで買ったの?」
「……」
最初は嫌がっていたはずなのに。
「南栄通りのスーパーの隣、おばさんがやってるお店」
灰原優歌は淡々と言い終わると、付け加えた。「きれいなおばさんだよ」
土屋遥:「……」
実は、灰原優歌がそう言うのを聞いて、土屋遥はどの店か大体わかっていた。
男子の間でもずっと噂になっていて、南栄通りにきれいなおばさんがやってる店があるって。
でも、灰原優歌も見た目で選ぶタイプだとは思わなかった。