この男は体力がいいな。
こんなに長く走っても、息が上がっている様子もない。
十数分後。
灰原優歌はもう走り続ける忍耐が尽きて、前を行く男の服の裾を掴んだ。
「お兄さん、ご飯に行きましょう」
灰原優歌は長い間研究室に座っているか、教室で寝ているかで、確かにもう付いていけなくなっていた。
「優歌、体力が足りないね。少し休憩して、また走る?」久保時渡は目の前の少女を見つめた。瞳は輝いていて、疲れた様子もなく、頬は健康的なピンク色を帯びているのに、もう止めたがっている。
甘えん坊な子だな。
しかし。
灰原優歌はそれを聞くと、またじっと彼を見つめて、「あなたこそ息切れしてるでしょ」
男は思わず一瞬固まり、その後ゆったりと眉を緩め、細かな笑みと慵懒さを浮かべた。
彼はセクシーな喉仏を動かし、低く笑い声を漏らした。少し掠れていた。