第475話 お姉さまは怖い

先ほど柴田裕香の演奏を聴いた視聴者たちは、もう味を覚えてしまい、その後の十数人の出場者の演奏を聴いても、つまらないと感じていた。

そのため。

灰原優歌がピアノを選んだとき、コメント欄では彼女が分不相応だと言う人が現れた。

しかし、予想外にも。

彼女が座り、その細くて美しい指が黒白の鍵盤の上を滑り始めると、スマートフォンを握っていた視聴者たちの手が凍りついた。

審査員たちさえも、この光景を信じられない様子で見つめていた。

灰原優歌は目を伏せ、ピアノの上で踊る十本の指は目が眩むほどの動きを見せ、その演奏技術も、今奏でている曲も、人々の肌に鳥肌が立つほどだった……

最初は傲慢な素人だと思っていたのに、まさか神レベルの実力者だったとは……

演奏が終わるまで。

会場内外を問わず、皆魂を奪われたかのようだった。先ほどの灰原優歌の演奏中、完全に曲調に感情を支配されていた。