第516章 それとも、優歌は気にしているの?

「学校行かないの?」

灰原優歌は意外に思った。高熱を出しても、久保時渡は彼女を学校に行かせるだろうと思っていたのに。

「苗木おばさんが食事を用意してくれたわ。食べて寝なさい。後で苗木おばさんが林院長の様子を見に来るわ」

久保時渡の合理的な段取りを聞いて、灰原優歌は足を止め、思わず眉をひそめた。

「どこに帰るの?」

久保時渡は唇の端を緩め、その曲線は怠惰で軽薄だった。彼は親しげに彼女の首筋を軽く摘んで、「お兄さんの家よ」と言った。

さらに久保時渡は「本邸はここから遠いから、私の家の方が近い」と付け加えた。

「いいわ」灰原優歌は深く考えることなく、他に違和感を感じることもなかった。

……

久保家に戻ると。

「お嬢様、やっとお帰りになられました」苗木おばさんは灰原優歌を見るなり、満面の笑みで迎えに出た。