第489章 やめて、くすぐったい

薄田京香の顔に浮かんでいた落ち着いた笑顔が、一瞬で凍りついた。彼女は両手を強く握りしめた。

この灰原優歌は、吉田麻奈未よりもずっと手ごわい。

「そうですか?でも灰原さん、自分がそんなに特別だと本当に思っているんですか?」

薄田京香は優しく笑いながら尋ねた。

灰原優歌は彼女をしばらく見つめ、突然唇の端が徐々に深い笑みを浮かべた。「薄田さんは私がどれほど特別か知らないでしょうね。でもすぐに、薄田さん自身がどれほど特別になるか、分かることでしょう」

その言葉が落ちた瞬間。

最初、薄田京香はまだ状況が把握できていなかった。

しかし突然。

「優歌」

薄田京香は体が硬直し、もちろんその声の主が誰なのかよく分かっていた。

そして、灰原優歌は目を上げ、人目を引く男性を見つめた。

この容姿では、人目を引かないはずがない。