「優歌、話があるんだけど」
佐藤知行は唇を噛んだ。
「うん?」
灰原優歌は彼の方を振り向いた。
「ごめん、この前のことで……」佐藤知行は少し恥ずかしそうだった。
「何をしたの?私の個人アカウントを売ったの?」灰原優歌は美しい瞳を細め、唇の端に浮かぶ笑みには冷たさが漂っていた。
先週、彼女のプライベートアカウントは友達申請で爆発寸前だった。
全て同じ学校の人からの申請だった。
「それは違う、僕じゃない!」佐藤知行は背筋が凍る思いで、すぐに否定した。
そんな大胆なことをする勇気なんて、彼にはなかった。
そして、二人が話している間、隣にいる土屋遥の後ろめたそうな様子に気付かなかった。
「じゃあ、なんで謝るの?」
灰原優歌は彼を横目で見た。
「薄田京香のことなんだけど……彼女があなたにそんなに敵意を持っているとは気付かなかった」佐藤知行は言い、優歌がこのことで自分と話さなくなることを恐れていた。