「水を一杯注いでくれませんか?」
灰原優歌はそれを聞いて、秋木謙を見つめ、最後には秋木謙にも水を注いでやった。
「そんなに私のことが嫌いなの?」
秋木謙が突然尋ねた。
「嫌い?」灰原優歌は目を上げて彼を見つめ、問い返した。
「君は、私に近づくのを嫌がっているようだけど。私の足のせい?」
男の声は低く潤んでいたが、水の入ったコップを握る手は少し白くなっていた。
「私は見知らぬ人に対して我慢強くないの。あなたもそうでしょう?」
灰原優歌は気にせず軽く笑い、別の場所に座った。
彼女は腕時計を見て、あと十分経てば任務を終えて帰れると待っていた。
その時、秋木謙も特に何も言い出さなかった。
空気が少し凍りついた。
「君のおじいさんは良い人だね」
灰原優歌は面倒くさそうに眉を上げた。「年を取るとみんなそうなるものよ」