第496話 映画を見る

その年、灰原優歌はほとんど研究室に引きこもり、三つのプロジェクトを開発した。

同じ年に、一人で三つの大賞にノミネートされた。

科学研究界で最も記憶に残る年となった。

……

夕暮れ時。

灰原優歌は戸田霄に楽譜を送り終え、報告書を書いていた時、突然パソコンの警告に気付いた。

誰かが彼女のシステムに侵入しようとしていた。

灰原優歌はちらりと見て、十本の指で報告書を書き続けた。

千字以上書いた頃、その人物がようやく侵入しそうになっているのを見た。

灰原優歌は嘲笑うように笑い、ゆっくりと文書を保存し、彼女のパソコンに侵入しようとしたその人物に、ちょっとした歓迎の贈り物をした。

その時。

ローシェルのある金融センターで。

自信満々だった男は、その場でパソコンを投げ出しそうになり、顔を青ざめさせて突然立ち上がった。