第496話 映画を見る

その年、灰原優歌はほとんど研究室に引きこもり、三つのプロジェクトを開発した。

同じ年に、一人で三つの大賞にノミネートされた。

科学研究界で最も記憶に残る年となった。

……

夕暮れ時。

灰原優歌は戸田霄に楽譜を送り終え、報告書を書いていた時、突然パソコンの警告に気付いた。

誰かが彼女のシステムに侵入しようとしていた。

灰原優歌はちらりと見て、十本の指で報告書を書き続けた。

千字以上書いた頃、その人物がようやく侵入しそうになっているのを見た。

灰原優歌は嘲笑うように笑い、ゆっくりと文書を保存し、彼女のパソコンに侵入しようとしたその人物に、ちょっとした歓迎の贈り物をした。

その時。

ローシェルのある金融センターで。

自信満々だった男は、その場でパソコンを投げ出しそうになり、顔を青ざめさせて突然立ち上がった。

「くそっ!!!」

「どうしたのハンス?」柴田裕香とよく付き合いのある謎の女性が、ドアを開けた。

顔を上げると、男が激怒している様子が目に入った。

エレナは目を暗くした。ハンスがこんな様子を見せるのは初めてだった。

「何か問題でも?」エレナはすぐに尋ねた。

「見つかってしまった」

ハンスは屈辱を受けたかのように、不快な表情を浮かべた。

「何ですって?!」

エレナも顔色を変えた。

ハンスは国内一のハッカーで、彼女が彼を会社に引き入れたのも、会社のセキュリティシステムを守り、ついでに仕事を手伝ってもらうためだった。

しかしアルリアのような小国に、コンピューター分野の専門家がいるはずがない??!

それに……

彼女がハンスに侵入させようとしたのはYUNのパソコンだった!!

まさか、YUNの周りにもコンピューターの専門家がいるのか??!

エレナが考え込む暇もなく、ハンスのパソコンが完全に画面が真っ黒になった。ハンスがどう操作しても、パソコンは壊れたかのようだった。

「これはどういうこと??」

エレナの表情は良くなかった。間接的に誰かに出し抜かれたのは初めてだった。

「あの人は私より技術が上だ。間違いなく彼女の仕業だ」

さっきまで苦労して侵入を試みていたのに、結局馬鹿にされていたと思うと、ハンスは罵りそうになるほど崩壊しそうだった。

そしてその時。