第497章 体に良くない

「……勉強系の映画。」

灰原優歌は目を逸らした。

男は悠々と果物を手に取り、自然な様子で灰原優歌に食べさせた。

久保時渡の声の尾は怠惰で、ゆっくりとしていたが、その言葉は灰原優歌に初めて「人前に出られない」という意味を深く理解させた。

「勉強系の映画って、みんな服着てないの?」

「ある知識は、服を着ていては学びにくいのよ」灰原優歌はゆっくりと答え、静かに回転椅子を横に向けた。

しかし次の瞬間。

男の優雅な腕が、灰原優歌の座る回転椅子を掴み、直接彼女を自分の前に引き寄せた。

灰原優歌は否応なく男と至近距離で向き合うことになった。

久保時渡は長い人差し指で彼女の横の肘掛けを軽く叩き、深まる瞳は人を魅了し、どこか攻撃的で、低く怠惰な声で、軽薄で目立つように言った。「いいよ、お兄さんに教えて、どんな知識を学んだの?」

「……一生使うことのない知識よ」

灰原優歌は先ほどの映像を思い出し、少しハードコアすぎると感じた。

久保時渡も、この子がこんなものを見ているとは思っていなかった。

久保時渡の目が半ば暗くなっているのを見て、灰原優歌は他人のパソコンをハッキングして偶然見つけたとは言えなかった。

そのため今、他人のパソコンを完全に破壊しなかったことを少し後悔していた。

柴田集団の資料は二級重要ファイルにあった。それらの怪しい映画が、なぜか一級重要ファイルにあったのだ。

灰原優歌は唇を舐め、「お兄さんも、全部見たの?」

「ああ、優歌のおかげで。見識が広がったよ」

久保時渡の口調は淡々としており、感情が読み取れなかった。

「どう思った?」灰原優歌は突然知的好奇心が湧いてきた。

久保時渡はその言葉を聞いて、美しい淡い瞳を深く凝らし、怠惰に半開きにして、低く潤んだ声で妙に危険な調子で言った。「知りたいの?」

先ほど少女が再生したものは、彼もちらっと見ただけだった。結局、性的指向が正常な男性なら、こういうものに好感は持たないだろう。

「……別に」

久保時渡は彼女をしばらく見つめ、突然口角を上げた。「優歌、そんな知識は控えめにね、体に良くないから」

灰原優歌:「……」

このクソ野郎、また下ネタを言ってるんじゃないの?

……

翌日。

灰原優歌は永徳を出たばかりで、すぐにA.M.計算研究所へ向かった。