遠くから、多くの視線が注がれていた。
その大半は女性だった。
灰原優歌は久保時渡を見て、特に驚きもしなかった。
この男は外では、蜂や蝶を引き寄せるのが上手かった。
「時渡」
遠くから、突然一人の老人が近づいてきた。中山服を着て、とても元気そうに見えた。
「宮地様」
久保時渡は立ち上がり、宮地様の前に行って話を始めた。灰原優歌は久保時渡について来た者として、当然挨拶に行くのが礼儀正しいと思った。
「この方は……」
宮地様はこの綺麗で可愛らしい娘を見て、少し躊躇した。
「はじめまして、灰原優歌と申します」
灰原優歌は軽く頭を下げた。
その時、男は唇を少し上げ、「私の娘です。宮地様、よろしいでしょうか?」
「そんなことを言うな、私が反対するわけがないだろう」
宮地様は灰原優歌のことを気に入った様子だった。ただ、久保時渡が言った「私の娘」という言葉が、どういう意味なのかはよく分からなかった。