「着きました。あなたと渡様だけ降りていただければ」
灰原優歌は応じて、「はい、ありがとうございます」
「どういたしまして」
曽田助手は少し不思議に思った。今日は渡様はお酒を飲まされなかったのだろうか?
以前、渡様が酔っ払った時は、あまり話したがらず、人にも構わなかったはずだ。
灰原さんが対応できるかどうか心配だ。
そしてこの時。
灰原優歌は男性が手を繋いでおとなしくしているのを見て、思わずほっとした。
もし前回のように人前でそんなことになったら、殺して口封じするしか他に良い方法は思いつかなかっただろう。
ただし。
外では夜風がそよそよと吹き、時折クラクションの音が聞こえる以外は、静寂が支配していた。
灰原優歌も手の温もりを感じ、何となく慣れない感覚に襲われた。
思考を切り替え、灰原優歌は早く彼を車に乗せたいと思った。