彼女が目を上げると、男の瞳の奥に欲望が渦巻いているのが見えた。
指先が男の長く整った指にさりげなく握られ、彼は唇の端をかすかに上げて「お兄さんがあげるよ」と言った。
灰原優歌が反応する間もなく、彼女の手は男の引き締まった腹部に置かれた。
その瞬間、心の準備ができていなかった灰原優歌は体が固まってしまった。
毎朝久保時渡が運動しているのを見ているだけに、この引き締まった腹筋は、服を着ている時の知的で優雅な姿とは大きく異なっていた。
薄い生地越しでも、灰原優歌は心臓が早鐘を打つのを感じた。
男が身を屈めて、近すぎるほどの距離で、彼の笑い声が低くかつ魅惑的に響き、彼女の耳を熱くさせた。
「これで十分かな、優歌?」
灰原優歌:「……」
なぜこの男は何を言っても、人の道から外れているような感じがするのだろう?