佐藤知行も初めて見た、福永健仁をそこまで言い返せる人を。
福永健仁が灰原様を怒らせた理由も分からない。
「顔を立ててやったのに、受け取らなかったわね」
灰原優歌はゆっくりと言い終わると、鈴木遥の方を見て、「あなたはどうしたの?お人好しのバイト冒険記?」
鈴木遥は「……いいえ、ただ家の事情があまり良くなくて」
灰原優歌は最初気付かなかった。鈴木遥の雰囲気は普通の家庭の女の子には見えなかったから。
「家で何かあったの?」
灰原優歌は彼女を個室に連れて行くと手を離し、胸元の名札を外して、自分の上着を脱いで彼女に掛けてあげた。
「はい、破産しました」
鈴木遥は頷いて、穏やかな様子で、むしろ落ち着いていた。
土屋遥は思わず笑って言った。「灰原様、女の子にそんなに厳しくしないでくださいよ」