第15章 誰が漏らしたのか

実は海野桜が用意した離婚協議書が漏洩してしまったのだ。

しかも、噂は具体的で、離婚協議書の内容がすべて広まってしまい、信じざるを得ない状況だった。

今では、ほとんどの人が彼の離婚の件を知ってしまっている。

会社への道中、東山裕は多くの人からの電話を受けた。

彼らの質問はただ一つ、離婚のニュースは本当なのかということだった。

最後には怒り心頭で携帯の電源を切り、誰の電話も受けなくなった！

……

社長室のドアが勢いよく開かれた——

東山裕が威圧的に入室し、後ろには七、八人の秘書とアシスタントが続いていた。

「一体どういうことだ？！」彼は振り向いて冷たく尋ねた。

彼の鋭い眼差しに、全員が震え上がった。

普段から威厳があるのに、怒り出すとさらに恐ろしかった。

誰も前に出ようとしなかったが、チーフ秘書の林馨だけが一歩前に出て、比較的落ち着いた様子を見せた。

「社長、これは私たちの不手際です。昨日机の上に置かれていた書類袋を、誤って開けてしまい、中の離婚協議書を見つけてしまいました。ですが、この件は外部に漏らさないよう指示を出しました。」

昨日、東山裕は早めに退社し、彼が帰る時、数人の秘書はまだ残っていた。

彼の秘書は多いが、彼のオフィスに入って書類を扱えるのは数人だけだった。

機密書類は通常施錠されているため、秘書が見られる書類はそれほど重要ではないものばかりだった。

たまたま昨日は、海野桜からもらったものが離婚協議書だとは知らず、彼女が渡したものを忘れてしまっていた。

そうでなければ、秘書に発見されることはなかった。

しかし、発見したとしても外部に漏らすべきではなかった。今が「東山」にとって最も重要な時期だということは、彼らもよく分かっているはずだ。

離婚のような話が広まれば、それは意図的に会社の利益を損なうことになるではないか？

東山裕は鋭い目つきで「誰が開けた？」と問いかけた。

その言葉が終わるや否や、一人の女性秘書が全身を震わせた。

「お前か？」東山裕の視線が彼女に向けられた。

その女性秘書は即座に泣き出し、「社長、申し訳ありません。故意ではありませんでした。どんな書類か分からなかったので開いて見てしまいました。中身が何だったのか本当に知りませんでした……」

東山裕は他の者たちも見渡し、「誰が見て、この件を知っているんだ？」

その場にいた全ての秘書が、林馨を含めて手を挙げた……

東山裕は林馨を見つめ、彼女はすぐに責任を引き受けようと「社長、私の管理不足です。これは私の不手際であり、どんな処罰でも受け入れます！」

「誰が外部に漏らした？」東山裕は彼女の言葉を無視して再び尋ねた。

「……」誰も声を出さなかった。

認めれば確実に終わりだと分かっているのに、誰が馬鹿正直に名乗り出るだろうか。

東山裕は冷たく口角を上げ「全員出て行け。30分やる。誰も名乗り出なければ、全員クビだ！」

「……はい」林馨は頷き、他のメンバーを率いて退室した。

社長室のドアが閉まると、数人の秘書たちは慌てて林馨に尋ねた。

「林総監、どうすればいいんですか？私は絶対に漏らしていません。」

「私でもありません。」

「誓って私じゃありません！」

彼らは全員否定し、林馨は厳しい表情で「もし皆さんでないなら、誰なのでしょう？いずれにせよ、情報を漏らしたのは皆さんの中の誰かです。自分から認めた方がいいでしょう。そうすれば社長も寛大に処理してくれるかもしれません。」

林馨はまだ22歳で、チーフ秘書の座に就いており、他の人々は彼女のことを好ましく思っていなかった。