後に彼女のデザインが採用され、東山裕と一緒にしばらく働いていた。
彼女がこれほど有能だとは思わなかったが、今では秘書部長の座に就いている。
しかし、彼女は若すぎて優しすぎる性格だから、いじめられる結果になってしまったのだろう。
柴田治人はもう見ていられなくなり、歩み寄って「何をしているんだ?」と声をかけた。
皆は一瞬驚き、声のする方を見ると、背の高いハンサムな男性が近づいてきた。
「柴田社長...」まさか彼が来るとは思わず、全員が怖くて声も出なかった。
先ほどの会話をどれだけ聞いていたのか分からない。
林馨は柴田治人の視線に気づき、慌てて背を向けて涙を拭った。自分の惨めな姿を見られたくなかった。
柴田治人は深い眼差しで見つめ、何も言わずに社長室に入った。
東山裕は電話で広報部にこの件の対応を指示していた。
彼が入ってくるのを見て、電話を切り「どうしてここに?」と尋ねた。
東山裕と柴田治人は幼なじみの親友だった。
柴田治人がここに来たのも、今日起きた出来事のためだった。
「離婚の話は聞いたが、本当なのか?」彼は質問で返した。
東山裕は直接答えず「今は誰が情報を漏らしたのかを突き止めたいだけだ」と言った。
柴田治人はソファにだらりと座り「さっき外で何があったか知りたいか?」と尋ねた。
東山裕は眉を上げ、続きを促した。
柴田治人はすぐに先ほど目撃したことをすべて話した。
林馨が泣いていたことも含めて、詳しく説明した。なぜこんなに詳しく話すのかわからなかったが、おそらくあんなに優しくて弱い女の子がいじめられるのを見たくなかったからだろう。
「もし彼女がこの濡れ衣を着せられたら、どうするつもりだ?」柴田治人は思わず尋ねた。
東山裕は大きな反応を示さず「彼女がやったわけじゃないのに、なぜ認める必要がある?」と答えた。
「コンコンコン...」彼の言葉が終わるか終わらないかのうちに、ノックの音が聞こえた。
「入れ!」
林馨がドアを開けて入ってきたが、彼女一人で、他の人は付いてこなかった。
彼女の目は少し赤く、やはり泣いていたようだ。
しかし背筋はピンと伸び、表情は落ち着いており、澄んだ大きな瞳には清々しい光が宿っていた。
「社長...」彼女は東山裕に軽く頭を下げ、次に柴田治人の方を向いて「柴田社長、こんにちは」と挨拶した。