第37章 一晩中眠れなかった

指が無意識に動き、すぐにでも隣の女を引き寄せて好き勝手にしたくなるような衝動に駆られた!

でも、それは許されない!

彼らは離婚するはずだ。もう彼女に触れることはできない。さもないと、この結婚はより一層もつれてしまう!

東山裕は、今の自分がどんなに望んでも、彼女に触れてはいけないことをよく分かっていた。

急に体を反転させ、イライラしながら目を閉じ、早く眠りにつこうと、何も考えないようにした。

しかしその時、眠りの中の海野桜が彼の方向に向かって寝返りを打った。

振り向かなくても、彼女が更に近づいてきたことが分かった。

彼女の浅い、女性特有の香りを鮮明に感じ取ることができた。

振り向けば、すぐ近くで彼女の顔と向き合えそうだった。

東山裕が何とか抑え込んでいた衝動が、また蠢き始めた。

しかも今度はより強く、もはや抑えきれないほどだった。

部屋にエアコンがあるのに、温度が少し高く感じられた。

体がどんどん熱くなっていく……

くそっ——

東山裕はイライラしながら勢いよく起き上がり、バルコニーへ直行して煙草を吸った!

手すりに寄りかかり、夜の冷たい風に当たっているうちに、徐々に体の中の衝動が落ち着いてきた。

しかし、もう戻って寝る気にはなれなかった。

……

一夜が過ぎた。

海野桜はこの夜、とても気持ちよく眠れ、夢一つ見なかった。

昨夜、鴻野美鈴が安神効果のあるアロマを贈ってくれたが、まさかこんなに効果があるとは思わなかった。

海野桜は体を起こし、だらしなく伸びをしながら、小さな顔に満足げな笑みと心地よさを浮かべた。

「カチッ」——東山裕がちょうどバスルームのドアを開けて出てきた時、彼女の表情が目に入った。

それは明らかに、気持ちよく眠れた後の目覚めの表情だった。

海野桜は彼の視線と合い、両腕を下ろし、淡々と挨拶した。「おはようございます。」

東山裕は無表情で、完全に彼女を無視し、直接クローゼットを開けて服を探し始めた。

彼の全身から、まだ暗い雰囲気が漂っているようだった。

海野桜は心の中で舌打ちをした。朝から嫌な顔を見せるなんて、病気じゃないの!

東山裕はすぐに身支度を整えて階下へ降りた。

早寝早起きの鴻野美鈴は、すでにダイニングで優雅に朝食を楽しんでいた。