第61章 東山裕を忘れた

あの時、彼は相良おじいさんと同じように、心に掛かる孫娘に会えないまま死んでしまうことを恐れていたのでしょう。

だから当時のおじいさんは、心残りを抱えたまま旅立ったのです……

でも幸い、彼女にはやり直すチャンスがあり、今生はおじいさんに孝行を尽くし、穏やかな老後を過ごしてもらえます。

しかし相良おじいさんが心残りを抱えたまま旅立ってしまえば、二度目のチャンスはないのです。

海野桜は、相良剛が現れて、相良おじいさんが安心して旅立てることを切に願っていました。

でもこんな時になって、相良剛は本当に現れるのでしょうか?

海野桜がそう考えていると、突然重くて急ぎ足の足音が聞こえてきました。

振り向くと、涙で曇った目の中に、迷彩服を着た、体格の良い威厳のある男性がこちらに向かって歩いてくるのが見えました。