第60章 なぜか涙が出る……

気がつかないうちに、夜が明けていた。

海野桜は机に伏せたまま、うとうとしていたところ、おじいさんの大きな叫び声が聞こえた。

「誰か来てくれ!早く来てくれ!」

海野桜は突然、夢から目が覚めた!

彼女は立ち上がって走り出そうとしたが、両足が痺れていて、一歩踏み出したとたん、激しく床に転んでしまった。

「誰か来てくれ……」外からおじいさんの焦った声が聞こえた。

海野桜は、相良おじいさんに何かあったに違いないと思った!

彼女は歯を食いしばって体を支え、必死で外に走り出た。

相良おじいさんの寝室は隣にあり、浜田統介がさっき起きているかどうか見に行ったところ、床に倒れて意識を失っているのを発見した。

浜田統介の叫び声に誠と海野桜が駆けつけた。

「相良おじいさんどうしたの?」海野桜は驚いて尋ねた。

「誠、早く病院に連れて行け!」浜田統介は答えずに、誠に指示を出した。

「はい!」誠は相良おじいさんを背負って外に飛び出した。

海野桜も急いで浜田統介を支え、後を追った。

しかし、階段を降りる時、浜田統介が動揺していたのか、バランスを崩して階段から転びそうになった!

「おじいちゃん!」海野桜は慌てて彼を支えたが、今度は自分がバランスを崩して、お尻から階段に座り込んでしまった!

「あっ……」海野桜は痛みで叫び、お尻が二つに割れたような感覚だった。

浜田統介は手すりをしっかりと掴み、心配そうに彼女に尋ねた。「桜、大丈夫か?」

海野桜は痛かったが、顔を上げて笑顔を見せた。「私は大丈夫です。おじいちゃんは大丈夫ですか?」

「私も大丈夫だ。本当に大丈夫なのか?」浜田統介は心配そうに聞き返した。

「うん、大丈夫です……」海野桜は嬉しそうに笑った。

おじいちゃんが怪我をするのを防げたからだ。

おじいちゃんが無事なら、自分が怪我をしても構わない。

しかし、相良おじいさんの状態を思い出すと、海野桜の表情は再び重くなった。

相良守はすぐに病院に運ばれ、救急処置が施された。

海野桜たちは手術室の外で待っていたが、長くは待たずに手術室のドアが開いた。

「患者の状態は最悪の状態です。我々にはもう手の施しようがありません。あと一、二日というところです。心の準備をしておいてください。」医師が重々しく彼らに告げた。