しかし、東山裕は何故か嬉しくなれなかった。
海野桜が跳ねながら歩く後ろ姿を見つめ、思わず冷笑してしまう!
彼は完全に狂ってしまったに違いない。さっきの一瞬、彼女と離婚したくないなんて思ってしまうなんて!
彼らがどうして離婚しないことがあろうか。
これは彼女から逃れるための絶好の機会なのに……
東山裕の目の奥に冷たい光が走り、暗い表情で立ち去った。
張本家政婦が衣類の整理を終えたところで、海野桜が鼻歌を歌いながら寝室に入ってきた。
彼女は面白そうに尋ねた。「お嬢様、何か良いことでもあったのですか?こんなにご機嫌なようで」
海野桜は優雅にくるりと回転し、満面の笑みで尋ねた。「張本さん、私が学校に戻って勉強するのはどうかしら?」
張本家政婦は驚いた。「勉強ですって?お嬢様は勉強が嫌いだったはずでは?」