どうせ東山裕のものを参考にしたって、彼女は全然気にしていなかった。
それに、彼女がデザインしたものは、結局彼にあげたのだから。
海野桜はそう考えると、自信が湧いてきた。「私がデザインしたのよ。最初のは確かにあなたの以前のデザインスタイルを参考にしたけど、二番目のは見ればわかるでしょう、ほとんど私のオリジナルよ」
「やっと認めたな、最初のは俺の手法を参考にしたって!」
実は彼女のスケッチを最初に見た時から、それが自分のデザインスタイルだと分かっていた。
ただ、海野桜が描いたものが、自分のスタイルとここまで似ているとは思わなかったので、とても驚いていた。
まるで、自分がデザインしたかのように……
さらに驚いたのは、彼女が耳学問だけで、彼のデザイン思想を理解できたということだ。
もしそうなら、天才の名声を彼女に譲ってもいいくらいだ!
海野桜は厚かましく言った。「前から言ってたでしょう、あなたのデザインを真似するって。でも後で気付いたけど、あなたのデザインはたいしたことないわ。私のの方が綺麗よ」
東山裕は目を細めた。「お前のの方が綺麗だと?」
「そうよ」海野桜は得意げに言った。「あなたのデザインした建築は冷たすぎて、人間味がないわ。私のを見て、どれだけ綺麗か分かるでしょう。見れば見るほど味が出るの」
男の目が微かに揺れた。
この点は認めざるを得なかった。確かに彼女のデザインの方が柔らかな美しさがあった。
彼のデザインした建築は、フォルムは流麗で独特だが、硬すぎた。
しかし、これも彼のスタイルなのだが……
海野桜は彼が話を続けることを恐れ、いらいらして言った。「どうせ外には、あなたがデザインしたって言えばいいでしょう。私は気にしないわ。お金さえくれればいい」
東山裕は彼女を深く見つめ、淡々と言った。「どんなインスピレーションであれ、お前がデザインしたものはお前のものだ。賞金は振り込むが、このデザインは修正が必要だ……」
「好きに修正して。どう変えてもいいわ。あなたにあげたら、もう私のものじゃないんだから」海野桜は再び気前よく言った。
東山裕は呆れた。こんなにお金に執着する女は見たことがなかった。
お金さえもらえればいいのか……
「分かった。お前の言う通りだ。これからは俺が処理する。口を出すな」