海野桜は怒るどころか笑みを浮かべた。「そういうことなら、私もあなたのことに口を出す資格があるってことね?」
東山裕は意地悪そうに口元を歪めた。「俺のことで、お前が口を出さなかったことなんてあったか?」
「……」
そうね、以前の彼女は世話焼き女のように、彼のすべてに干渉しようとしていた。
あれは間違っていた……
海野桜は冷ややかに言った。「これからはあなたのことに口出ししないわ。あなたも私のことに口を出さないで」
「それは結婚した時に言うべきだったな」
海野桜はイライラして言い返した。「だから以前は間違っていたの。今、正そうとしているじゃない。どうして?私が改めないほうがいい?私にずっとあなたのことに口出しさせたいの?」
最後の言葉には、皮肉めいた口調が混じっていた。
東山裕は深い眼差しで、冷たく黙り込んだ。
そのぎこちない雰囲気のまま、家に戻った。
張本家政婦は海野桜が帰ってきたのを見て、とても喜び、進んで彼女の手から荷物を受け取った。「お嬢様、やっとお帰りになられましたね。ご老人様はお戻りになられましたか?お変わりありませんでしたか?」
海野桜も張本家政婦を見て嬉しそうだった。「みんな帰ってきたわ。おじいさまは大丈夫よ」
「お嬢様、この間ずいぶんお痩せになられましたね。今日は何がお召し上がりたいですか?私が作らせていただきます!」
「何でもいいわ、お任せするわ」
「かしこまりました。まずは荷物をお部屋にお運びいたします」張本家政婦は荷物を持ち上げながら、小さな袋の一つを不思議そうに見て尋ねた。「お嬢様、これは何が入っているのですか?」
海野桜はそれを受け取った。「ちょっとした物よ。張本さん、先に荷物を運んでくれる?」
「はい」張本家政婦は荷物を持って二階へ向かった。
海野桜は東山裕の方を向き、袋から設計図を取り出して彼に渡した。「はい、これは私のデザインよ。賞が取れるかしら?」
東山裕は不思議そうに受け取り、開いた。
海野桜が描いたものを見て、彼の目に驚きの色が浮かんだ!
彼女を見る目も、深い意味を帯びていた。
「この前書斎で見た下書きとは違うな」
海野桜は淡々と言った。「あのデザインは好きじゃなかったの。冷たすぎたから、やめたわ」
「これ全部お前がデザインしたのか?」