向こうから東山裕の低い声が聞こえた。「福岡市に着いたのか?」
「突然帰ってきたのに、何も言うことないの?」海野桜は実は彼のことをまだ怒っていた。彼女をこんなにもてあそんだことに。
東山裕は低い声で言った。「特に言うことはない。帰ったのならそれでいい。ここに残っていても何もできないだろう」
「そうね、私はあなたの目には何の役にも立たない人間なのよ!役立たずなのに、なぜニューヨークに連れて行ったの?東山裕、私をもてあそぶのが楽しかった?!」
「もてあそんでなどいない。入札に参加させないことは直前に決めたんだ」
「じゃあ、私がいなくても入札は成功したんでしょう?」海野桜は皮肉を込めて言った。
東山裕は素直に認めた。「ああ、成功した。だが、お前の功績もある」
「いりません!成功したなら、あなたが帰ってきたら離婚しましょう。そうしないと、私から一方的に離婚を公表することになるわよ!」