第101章 全家死んでしまうのが怖い

東山裕は頷いて、当然のように言った。「もちろんだ。世界中の人があなたが私と結婚したのは、あなたが得をしたと思っているから、あなたが私を利用しているということだ」

「……」海野桜は深く息を吸い、彼を殴りたい衝動を抑えた。

彼女は真剣な表情で言った。「東山裕、私は本気で離婚したいの。もう私をもてあそばないでくれる?」

東山裕も真剣な表情で、「私はあなたをもてあそんでいない。あなたは確かに私の妻として最適な人だ。これは本当のことだ」

「ふん……」海野桜は可笑しく感じた。「前はそんなふうに思っていなかったじゃない。今頭がおかしくなったの?それとも、本当に私のことを好きになったの?!」

「……」

東山裕は答えず、ただ深い眼差しで彼女を見つめていた。

彼の眼差しは漆黒で、まるでブラックホールのように、恐ろしい力を秘めていた。

海野桜は彼のそんな眼差しをまともに見ることができなかった。

なぜか、彼女は東山裕が以前の東山裕ではなくなったように感じた……

「何を見てるの?」海野桜は居心地悪そうに眉をひそめた。

「おそらくあなたの言う通りかもしれない!」東山裕は重々しく一言残して、車のドアを開けて降りた。

車は既に別荘に到着していた。

海野桜は呆然とした。何が正しいというの?

彼の頭がおかしくなったのか、それとも……彼が彼女を好きになったのか?

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「お嬢様、これは旦那様からのブラックカードです」

翌朝早く、海野桜が階下に降りてくると、張本家政婦は嬉しそうにカードを彼女に渡した。

海野桜は少し驚いて、「私に?」

「はい、旦那様が朝出かける時に、必ずあなたに渡すようにと特に言い付けられました」

「何のために?」海野桜は手を伸ばして受け取ろうとしなかった。

張本家政婦は笑って言った。「もちろん、自由に使っていただくためですよ。このカードは好きなだけ使えますし、現金も引き出せます。いくらでも使えますよ」

海野桜と東山裕の関係を、張本家政婦はずっと見てきた。

これは初めて東山裕が海野桜にこれほど寛大な態度を示したことだった。

張本家政婦は少し興奮して感慨深げに言った。「お嬢様、旦那様がついにあなたに優しくなり始めましたね。お金の使用を任せるということは、心の中にあなたがいるということです」