第130章 本当に彼女を思いやる人

浜田英司も諭すように言った。「そうですよ。お父さん、桜は分かっていないんです。何でも彼女の言うとおりにするわけにはいきませんよ。裕はとてもいい人です。二人の間に問題があるなら、きっと一人の責任ではありません」

浜田統介は若い世代の前で叱るのは適切ではないと思い、無視することにした。

彼は海野桜だけを見つめて、「桜、おじいちゃんに本当の考えを聞かせてくれないか?」

「おじいちゃん、私の離婚を...認めてくれるんですか?」海野桜は嬉しさと不安が入り混じった様子で尋ねた。

老人は頷いた。「離婚したって大したことじゃない。お互いが合わないなら、無理に一緒にいる必要はないんだ」

「お父さん...」浜田英司が何か言おうとしたが、父親に睨まれて、「黙りなさい、何も言うな!」

老人の威厳は依然として健在で、浜田英司はすぐに口を閉ざした。

東山裕は何故か緊張し始めた。

既に海野桜と離婚協議書に署名していて、彼女が離婚を望んでいることも分かっていたが、それでも彼は彼女が頷くことを望んでいなかった。

しかし、それは明らかに不可能だった。

海野桜が喜び狂わないだけでも上出来だった。

海野桜はおじいちゃんがこんなに簡単に離婚を認めてくれるとは思っていなかった。昨夜の怪我は本当に価値があったと思った!

しかし、彼女は冷静さを保って言った。「おじいちゃん、私のことを理解して、支持してくれてありがとうございます。こんなにも私のことを受け入れてくれるなんて、本当に思いもしませんでした」

一般的な家庭でも離婚はそう簡単ではないのに、まして彼女の場合は。

浜田家は福岡市で重要な地位にあり、東山裕の身分はさらに高貴だった。

二人の離婚は、両家の利益に関わるだけでなく、社会にも一定の影響を及ぼすことになる。

彼らのような釣り合いの取れた結婚では、たとえ愛情がなくなっても、一生我慢して続けなければならないことが多い。

離婚など絶対にあり得ないことだった!

しかし、おじいちゃんは彼女が何か辛い経験をしたことを心配して、離婚に賛成してくれた。これは彼女が全く予想していなかったことだった。

おじいちゃんこそが本当に彼女を大切に思い、彼女の気持ちだけを考えてくれる人だった。