浜田統介は頷いた。「確かに私たちと相談すべきだったな」
「おじいちゃん、私が離婚を強く望んだから、東山裕は仕方なく私と協議書にサインしたんです!」海野桜は慌てて説明した。「おじいちゃん、責めるなら私を責めてください。私が離婚を騒ぎ立てたんです!」
東山裕は心の中で自嘲的に笑った。
何を笑っているのかも分からなかったが、ただ可笑しく感じた。
「桜、お前は本当に分かっていない...」浜田英司が彼女を叱ろうとしたが、浜田統介に制止された。
「協議書にサインしたのなら、それでいいだろう。裕、いつか時間を作って、両家で集まろう。お前たちは夫婦だったのだから、おじいさんとしては両家が冷静にこの件に向き合えることを願っている」
東山裕は淡々と頷いた。「はい」
「両家で話し合った後で、離婚手続きを進めなさい。ただし、お前たち二人とも、今回の決定を後悔しないことを願っているよ」老人は結局、彼らに警告せずにはいられなかった。
海野桜は首を振った。「後悔なんてしません!」
東山裕は何も言わなかった。おそらく彼も後悔しないことを黙認したのだろう。
話がついたところで、浜田統介にも居る気力が失せたようで、張本家政婦に電話をかけて海野桜の世話を頼んだ。
そして彼らは帰っていった。
病室には、再び東山裕と海野桜だけが残された。
海野桜は淡々と東山裕を見つめた。「本当に私とすぐに離婚することに同意したの?」
男の口元に冷たい嘲笑が浮かんだ。「お前が苦肉の策を演じ切ったんだ。協力しないわけにはいかないだろう」
「苦肉の策?」海野桜は戸惑った。
すぐに彼の言う意味が分かった。
彼は、彼女が目覚めた時の異常な様子は全て演技だと思っていた。おじいちゃんに見せるためだけの芝居で、離婚に同意させるための策略だと。
海野桜は彼がそこまで考えていたとは思わなかったが、説明する気にもならなかった。
誤解しているのなら、そのままでいい。それも悪くない。
「東山裕、私たちは本当に合わないの。離婚は私たち二人にとって良いことよ」彼女は説明しようとした。
「ふん...」男は冷笑した。「そうだな。最初から、お前は必死に私と結婚しようとするべきじゃなかった!だから今、必死に離婚しようとするのも当然だ!」
「...」海野桜は彼の皮肉を感じ取った。